9月から10月にかけての季節の変わり目に、体調を急に崩される患者さんは少なくありません。
この時期、ブタクサによる季節性のアレルギー性鼻炎、夏から秋にかけて増えるダニや死ダニ、ハウスダストを吸い込むことによる通年性のアレルギー性鼻炎は突然やってきます。
そして今回のテーマである気管支喘息発作が起こりやすくなるのもこの時期です。
秋の空気は乾燥しているので要注意
秋は空気がとても乾燥して冷たくなっています。
通常、喉や気管支は、その粘膜表面に流れる粘液によって適度に潤いがあります。体内に入る外気は、鼻の中で適度な湿度と温度になって、喉、気管、肺の中へと入っていきます。
ところが、乾燥した冷たい空気が体内にいきなり入ってくると、喉や気管の粘膜の湿度が失われていきます。乾燥した粘膜は傷つきやすくなり、細菌やウイルス、あるいはダニやハウスダストなどのアレルゲンが簡単に喉や気管支へ侵入してくるようになります。この時、このアレルゲンや異物を排出しようとして、咳やくしゃみが起こるわけです。
気管支喘息では、気管や気管支に入ったアレルゲンによるアレルギー反応が起こり、気管支の粘膜が炎症して腫れることになります。これとともに空気の通り道である気道は狭くなり、ヒューヒュ―、ヒイヒイという喘鳴とともに、咳や痰が激しくなり、息苦しい状態を作り出してしまうことになります。
台風による気圧や気温の差が
気管支喘息発作を引き金となるのは、ダニやハウスダストだけでなく、今年のように頻発する台風による気圧や気温の急激な変化などがあります。
気管支の壁を作る平滑筋は、体を休息モードにしてくれる副交感神経(自律神経の1つ)によって収縮します。つまり、平滑筋が収縮すると、空気の通り道が狭くなるわけです。
台風は、低気圧の最たるものですので、副交感神経優位の状態を作り出すことになります。ちょっとした喉や気管支の刺激で平滑筋が収縮するので、台風が向かってくる時、喘息発作が起きてしまうのです。
台風と気管支喘息発作はこんなところで関係しているのですね。
気管支喘息の慢性化
また、気管支喘息で問題となりやすいのは、慢性化して「気道リモデリング」と呼ばれる気道の変形を起してしまっている状態です。
通常ダニなどのアレルゲンを吸い込んだ場合、即時型のアレルギー反応が出ますが、しばらくすると落ち着きます。
しかし、気道の変形まで病状が進んでいる場合には、一旦症状が落ち着いた後、数時間後に、再びひどい発作を起し、それが深刻な状態になってしまうことがあります。
この原因には、“好酸球”や“好塩基球”と呼ばれ炎症を起こす免疫細胞の働きがあります。これらの細胞の働きが過剰になると、気道の閉塞や、粘膜を壊し、平滑筋を肥大化するなど、気道の変形を促すことになります。
秋には戦闘モードを作り出す交感神経が活発に
秋に喘息発作が出やすい背景には、自律神経系の変化もあります。
秋は、夏のゆったりモードの副交感神経優位の時期から、体を戦闘モードにする交感神経(自律神経のもう一つの働きを担う)の活動が活発になっていく時期です。
秋から冬にかけて粘膜や組織の障害を起こす病気が増加します。それは交感神経が優位になることで、先ほど述べた“好酸球”などを含む“顆粒球”と呼ばれる免疫細胞の活動が過剰になりやすいからです。
ASTと気管支喘息
さて、AST気功は、気管支喘息に対応することは十分可能です。
患者さんが激しく咳き込んでいる時には、座位姿勢を取ってもらいます。気功師は、ゆっくりと患者さんの背中から気管支に向かってASTのプラスの気を送り、気管支の粘膜の炎症を鎮めるようにしていきます。
次に気管支を強く収縮させている平滑筋に気を送り、気道を開けるように意識します。これらによって次第に呼吸は穏やかになっていきます。
しかし、喘息症状が慢性化(気道の変形がある場合)している場合、あるいはアレルギー症状が前面的に出ている場合は、少々厄介です。
気功後、落ち着いていた喘息症状が、しばらくすると、何らかの刺激で、再び出てしまいます。例えば、早口で話して、急に冷たい空気が口中に入っただけで、再び激しく症状が出てしまいます。
症状が慢性化している場合は、アレルゲンに対する過剰反応が強いので、1,2回の気功では、症状を落ち着かせることが難しいのです。
慢性化している気管支喘息の方や、アレルギーによる病気、例えば、アトピー性皮膚炎や、花粉症などの場合は、AST気功では、年単位での施療期間が必要となってきます。
なぜなら、AST気功では、アレルゲンに反応しないような体作りを目標に進めていくからです。
アレルゲンに反応しない体作り
アレルギーを引き起こす要因は、人それぞれです。
直接的なアレルゲン(ダニやほこり、花粉、食べ物など)だけでなく、環境因子、遺伝的因子、ストレス、気温差、季節、生活スタイル、運動、そしてアレルギーを引き起こしやすい性格などがあります。
それらの要因が相互的に、そして潜在的に身体に影響を与えていると考えています。
AST気功の気は、からだの細胞1つ1つに浸透していく力がある気です。
繰り返しASTの気を症状のあるところに送ることで、細胞1つ1つが健全になっていき、人間本来の持つ自然治癒力を押し上げていきます。
気功を年単位続けていくことで、少しずつ少しずつあレルギーに反応しなくてもよい状態に変わっていきます。
その体の変化を患者さんもまた、少しずつ感じていくようになります。
しかし、それは気功師の方が先に実感するように思います。気功施療を通して返ってくる患部の反応が、気功師の手に教えてくれるからです。
それは何よりもまず、患者さんの表情が次第に明るく変化してくることから分かることなのですが。
2,3年ほど前までは年中喘息症状で苦しんでいたのが、1昨年あたりから、秋から冬と、明け方から朝にかけての症状に減ってきた。気が付くと、最近は発作の回数がすっかり減っていた、と気管支喘息の方がお話してくれました。
その方は自らAST気功を習い、症状が出た時、自分でも気功を行ないながら、症状の緩和を努めてこられた方です。
そういえば、AST気功を習っておられる方は、気がつくと、花粉症やアレルギー性鼻炎がいつの間にか出なくなっているようです。
参考図書:
日本AST協会(2014) 私、AST気功をやっています。ふじやま出版会
日本AST協会(2003) 気功治療 星雲社
斎藤博久(2015)Q&Aでよくわかる アレルギーの仕組み 技術評論社
ロバートCフルフォード&ジーンストー(2017)
いのちの輝きフルフォード博士が語る自然治癒力 翔泳社
藤田紘一郎(2011) こころの免疫学 新潮選書
安保徹(2003) 絵でわかる免疫 講談社