/ 8月 1, 2018/ 新着情報, 記事一覧

『熱中症』という言葉がすっかり定着してきました。ここ数年、熱中症で亡くなるという悲しい出来事が相次いでありますが、数十年前の子供時代には、見られなかった気がします。

子供時代、夏休みになると、祖父の実家に子供だけでお泊りに行くのが恒例でした。

鈴なりになっている真っ赤なトマト畑。白く可愛い花が咲いているキュウリ畑、太くまんまるに育ったナスが、たわわにゆらゆらと風に揺れている風景。
井戸水のそばにはスイカやジュース、ビールなどが冷やされていました。

子供心に、田舎の生活で一番不思議だったのが、朝、昼、夜と、必ず食膳に出てくる、鉢一杯のトマトやキュウリ達。
これらは夏野菜の収穫の代表選手で、商品としてはねられた、少し傷ものを食べるのは農家にとってはごく当たり前のこと。
不思議なのは、その食べ方です。
大きくざっくりと切ったトマトやキュウリを、家人はそれぞれのお皿に取り分けると、その上にたっぷりと塩を振ったり、しょうゆをかけるのです。
それをさも美味しいそうに、ごはんと一緒にほおばるのです。

当時、トマトやキュウリをそのまま素で食べることが苦手でした。むしろマヨネーズをかけて食べるのが本当の食べ方だと思っていたほどです。
ところが不思議なことに、塩だけで食べるのがとても美味しかったのです。

祖父の実家では、朝起きてから、食事までの間、ほとんど日照りの中、畑や山の中を駆けずり回って遊んでいました。
喉が渇けば、従兄弟たちと、畑からくすねたトマトをかぶりついたりしました。おやつにはアイスクリームの代わりに、井戸水で冷やしたスイカでした。その時もまた、家人に倣って、たっぷりと塩を振りかけて、美味しくいただいたのを覚えています。

祖父の実家にいる間、喉が渇いたので、お茶をください、とか、お茶を飲みなさい、とか、というやり取りもなかったような気がします。

今、『熱中症』が社会問題になってきて、初めてあの時の祖父の実家の『不思議』が理解できた気がします。

体内の水分調整には、夏野菜と塩が欠かせないものだったからです。
今では、一年を通していろんな野菜が出回るようになりましたが、どうしてトマトやキュウリは夏野菜といわれるのかというと、水分とカリウムがたっぷり含まれているからです。

夏、汗をかいて、ミネラルや水分が出ていきやすくなります。そんな中、水だけをたくさん取ると、血液中の塩分濃度だけが薄くなり、細胞内の脱水がさらに進んでしまうことになります。

体内の水分調整には、ナトリウムイオン(簡単にいうと塩分)が大きく関係しています。そのため、たくさん汗をかいた後には、水と一緒に塩分を取るとよいといわれています。同時に糖分を一緒に取る方が、より効果的に脱水を防いでくれることになります。

実は、このナトリウムの水分調整は、カリウムイオンとの細胞内外の濃度のバランス関係で成り立っています。
夏野菜には、水分だけでなく、カリウムがたっぷり含まれています。
それに塩を振って食べるということは、ナトリウムとカリウムのバランスが取れて、おまけに水分までしっかり取れるということから、夏には理想的な食事だったということです。

ちなみに、自宅でもできる『経口補水液の作り方』はたくさんネットで公開されています。その中で、『お茶づけ』も脱水予防によいという記事を見つけました。なるほど、お茶の水分と、ごはんの糖分と、お漬物の塩分とカリウムがすべて含まれていますので、うなずけます。食欲のない方は、ぜひ、キュウリやナスの浅漬けで、シャシャシャッとお茶づけを食べてみてください。

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