丁度昨年の秋頃、母親の気功の遠隔を依頼されている息子さんから電話がありました。―最近母親の右手があまり動かなくなってきているようなのですが。
はじめてそのお母様にお会いしたのは新型感染症が本格的に広がる前の昨年2月初旬でした。御年90歳をゆうに超えられており、その一年前に体調を崩されてからはほとんど寝たきりの状態でした。もともとその方には基礎疾患はなかったこともあり、初めて対面気功をしてそろそろ帰宅しようとした時、突然自力で布団からスっと起き上がり、「ありがとうございました」とお声を掛けてくださったのにはさすがの息子さんもびっくり。「今、自分で起き上がりましたね。今まで自力では起きられなかったのに」。
その後遠隔を続けていく中で、しっかり自力でお布団の上に起き上がり、息子さんの手助けが必要だった食事も右手でお箸を持って1人で食事ができる状態まで回復されていきました。
電話では、母親の右手の動きは少し変だけれども、あとは特に目立ったことはないので、病院にまだ行っていない。もし病院にいくとしてもどこに行けばよいのかもわからない。しかし何となく心配だから、ということでとりあえずこちらに電話を掛けたと話されます。
急に寒くなってきた時分に、この年齢で、手の動きが突然鈍くなる要因の1つに考えられるのは、もしかして脳梗塞かもしれない。
―最近お母様の呂律の回りはどうですか?お食事の時の飲み込みはいかがですか?むせ込んだりされませんか?
―そう言えば、最近呂律の回りが悪いかな。飲み込みもちょっと悪くなっているような気がします。
―もしかして、脳の血流が悪くなっている可能性があります。できるだけ早くかかりつけ医に見てもらった方がいいと思います。それだけ伝えると、こちらはすぐに頭の遠隔を開始しました。AST気功の遠隔というのは、今、まさに病院に運ばれている、というような非常時に遠隔を行なうことで、症状の悪化を食い止めたり、その後の病院の治療への橋渡しをスムーズしてくれる非常に心強い技術の1つです。
後日息子さんからの電話があり、果たして予想通り脳梗塞が数か所見つかり即入院されたとのこと。入院中にも遠隔はほぼ毎日行ないました。まずは脳梗塞の部位の血流を改善すること、頭全体の血流を促すこと、嚥下機能に関わる脳幹の血流を促し活性化すること、嚥下に関わる筋力のアップと嚥下機能の機能改善、左脳梗塞部から右手に繋がる運動神経の再教育と活性化、右手握力アップなどを目的として気功を行ないました。当初3週間の予定だった入院が経過はとても良好だったようで、2週間で退院されたとのこと。右手も以前と同じように回復され、飲み込みの力も戻り70歳くらいの方と同じくらいだと診断されたようです。
今回のような良好な経過と結果をもたらしたのは、息子さんのお母様への日頃のケアとこちらの遠隔がうまくかみ合ったからです。ケアする相手に何かいつもと違う?と感じても、日常の忙しさの中であえて問題にするまでもないとそのまま忘れてしまうこともあります。家族ならなおさらのこと。息子さんの気付きはおそらくそのくらいのちょっとした違和感だったに違いありません。しかし息子さんはそのままにせず、すぐさま行動に移されました。ケアをする側は目の前の様々な雑務をこなしていくのに追われる毎日になりがちです。しかしその中でほんのちょっとした気付きや変化(良い変化や悪い変化)を見つけることができるようになるのも家族ケアの最大の利点です。それを活かすことができれば大きなプラス効果をもたらすことができるのです。