毎年新年に、今年はどのように生きたいか、と自分に問うてみるのが習慣です。
今年こそ、これをしようとか、あれをしようとか、次々と願望は浮かんできますが、どれだけ目標を達成したかと言えば、お恥ずかしい限りです。そして性懲りもなく、今年もまた考えてみることにします。年末に大阪はCOVID―19禍に合わせて、3期ぶりのインフルエンザの流行期に入ったというニュースがありました。行動規制がなくなったとは言え、頭のどこか片隅には常に感染しないように注意しなければ、という思いを持ち続ける必要がまだまだありそうです。患者さんのご家族の中には、様々な理由から入院生活や施設に余儀なくされているという方がいらっしゃいます。ここ数年面会らしきものがままならず、ガラス越しでの数分間というケースが今なおあるのが現状のようです。病気から快復するには、言うまでもなくお薬や様々な訓練や療法、時には手術も必要です。しかし、それだけで本当によくなるのか。常に感じることは、いわゆる”肉体”だけを中心に捉える治療にどこか欠けているものがある気がしてなりません。肉体に施された治療が患者さんの治癒へと繋げていくもの。それはご家族や親しい人、パートナーが働きかけてくれるものではないでしょうか。
ありきたりの言い方をすれば、患者さんにとっての心の栄養になるものです。心の栄養とは、患者さんの目を見る、声を掛ける、励ましてあげる、患者さんの話に耳を傾ける、あるいは手を握ってひと時そばにいてあげる、痛いところをさすってあげる、などの行為です。今の不安を口にできる相手がそばにいてくれることや、”大丈夫や”、と一言言ってもらえることだけで、今の辛さや苦しさがスーと和らぐことがあります。ほんの些細なことかもしれませんが、その積み重ねが、病気と向き合える力に繋がっていくのだと思います。
今なら、手は握れなくてもオンラインなら、顔を見ながら話すことができるのではと思われるかもしれません。今の社会情勢では柔軟に対応していかなければならないこともあります。しかし今まで当たり前にあったことで、気が付くと当たり前にできなくなってしまっているもの。その中には代わりのないものもあるように思います。いつの間にか本当はとても大切なことだったのに、当たり前すぎて手のひらからこぼれ落ちていたというものはありませんか?今年は、生きていくために大切なもの、をもう一度見つめなおして、丁寧に生きていきたいと思います。
次にご紹介する井上ひさしさんの言葉*1で、今の生活を、そして今の社会の在り方を見つめなおすきっかけになってもらえればと思います。―むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでもゆかいにー
*1引用資料:PRESIDENT 頭がいい思考 バカの思考 プレジデント社 2022.12.16