/ 5月 22, 2023/ AST気功便り, 新着情報, 気功治療, 記事一覧

気功施療を通じて日頃実感することは、慢性的な痛みや不快な症状を訴える患者さんの多くは、情動的な要因からくる痛みが大きいということです。情動的な痛みとは何かというと、痛みがこのまま続いていくのではないか、もう病気が治らないのではないか、といった痛みに伴う不安や恐怖、そこに過去の痛み経験などが引き出されて合わさり、痛みがより主観的、感情的なものになっている状態です。

センター裏の水辺に咲くアイリス.。

実はこの情動的な側面を持つ痛みと、いわゆる障害を受けた箇所の痛みの強さや性質などを識別する感覚的な痛みは、脳で認識される場所は違うところにあります。つまり、情動的な痛みを脳に伝えるルートと感覚的な痛みを伝えるルート(伝導路と言います)は別物だからです。

しかし患者さんにとっては、どちらにしても、痛みを感じるとその強さからこのままでは死んでしまうかもしれない、これからどうなるのだろうという恐怖の感情が全面的に押し出されてしまいます。仮に傷害を受けた箇所の感覚的な痛みの強さは3とすると、先の感情的な恐怖や不安に伴う痛みは恐らくそれ以上の強さに跳ね上がり、体感的には“激しい痛み”となって表出されてくるのだと思います。もちろん患者さんによってその程度の差はありますが、こちらが想像する以上に情動的な痛みは強いものと察することができます。

路地に咲く姫ヒオウギ。

近年脳の研究が飛躍的に進んできました。一昔前では、原因が分からない腰痛は“いわゆる腰痛症”として一括りにされていました。最近では、人間関係からくるストレス、職場への不満や腰痛に対する不安など心の認識のありようがその要因になっていることが分かっています。そこで認知行動療法と呼ばれる治療法が医療現場で始まっています具体的にいうと、腰痛に対する正しい認識と、腰痛が起きる原因となる考え(認知)、それに付随する感情と体の反応(硬くなるとか)、さらにはそれによって決定される行動を見直し、調整していくものです。

緑地公園に咲く球根アイリス。

残念ながら、当センターに来られる方は、病院ではこれ以上治療法がないと言われたり、心療内科を紹介されたりした方で、なかなか現実的にはこの情動的な要因からくる痛みをいわゆる“痛み”としてフォローしてもらえるまでの状況ではないようです。

ASTでは、そのような痛みに苦しんでおられる方に必ず心理的側面での施療を併用します。施療の中心は痛みのある患部ですが、患者さんによっては心理的側面の施療が中心になることもあります。心理的側面の施療とは具体的に何をするかと言いますと、情動的な痛みを作る大脳辺縁系と言われる箇所と大脳の前頭葉を施療します。大脳辺縁系とは脳の深部に位置し、感情を作る扁桃体と、記憶を司る海馬があります。一度はその名前を聞かれたことがあるかと思います。その部位は痛みによって不安や恐怖が全面的に押し出してしまうところですが、通常は大脳の前頭葉にある前頭前野というところで、それらの負の感情をうまくコントロールされています。いわゆる理性によって感情的になりすぎないように抑えているわけです。しかし、あまりにも痛みが強く、長時間続くものなら、だんだんその理性による抑制が効かなくなり、痛みが暴走してしまうという結果になっていきます。

緑地公園のバラ。

ASTの施療としては、それらに関する大脳の部位のマイナスの気を取り出し、それぞれの脳の機能がバランスよく働くようにもっていきます。さらにはリラグゼーションの技術や痛みのためにバランスを失った自律神経系の乱れも整えるために、自律神経の治療技術も併用します。施療後痛みをうまく抑えることができるケースもありますが、残念ながら、うまく抑えることができないケースもあります。ところが不思議にも施療中は痛みが治まっていることが多いようです。20数年以上気功で痛みの施療を続けてきて思うことは、施療中痛みが消えている時間を患者さんが体験され、その体験を積み重ねていくことで、患者さんの気持ちに変化が少しずつ生じてくるような印象を受けます。だんだん痛みからくるストレスで凝り固まっている気持ちが和らいでいかれるように思います。次第にその患者さんは痛みが多少あったとしても日常生活を活動的に過ごすようになっていかれるます。そうして患者さん自身の力で痛みをコントロールされていくようになっていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Facebooktwittermail